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食品ロス研究の専門家渡辺達朗教授×オズマピーアールが担うファーストペンギン。両者が描く食の未来は

左から渡辺教授、国友

オズマピーアールは、食品ロス削減を中心とするフードサプライチェーンの持続可能性を目指す「一般社団法人サスティナブルフードチェーン協議会(以下SFA)」の活動に2019年から参加。多様なステークホルダーの合意形成を設計する役割を担っています。
今回はSFAの理事を務める専修大学の渡辺達朗教授と、SFAアドバイザーのオズマピーアール国友千鶴が対談。日本における食品ロスの現状やSFAの活動、PR会社だからこそ果たせる役割について語りました。

まったくの素人からスタート(国友)。国友さんの率直な発言に期待していた(渡辺)

-はじめに、お二人の自己紹介と出会いのきっかけについておしえてください。

国友:私は1998年にオズマピーアールに入社して、PRの仕事に携わってきました。クライアントワークを中心に活動していましたが、2017年に「東京都食品ロス削減パートナーシップ会議」に参加したことをきっかけに食品ロスの問題に携わっています。渡辺先生とはじめてお会いしたのも東京都の会議でしたよね。

渡辺:そうですね。私は流通やマーケティング分野を専門としていまして、食品流通を研究するなかで食品ロスの問題に関心を持つようになりました。2010年代前半のことです。当時は食品流通の分野で食品ロスにまつわる研究者があまりいなかったこともあって、農林水産省や地方自治体など、さまざまな議論の場に呼んでいただくようになり、東京都の会議にも声をかけていただきました。

-東京都の会議ではじめてご一緒したときの印象は?

国友:食品メーカーや卸売業、小売業、外食業といった食品のサプライチェーンに関わる事業者、消費者団体の方などが集まって、それぞれ実施されている取り組みについて発表していくのですが、私だけが素人(笑)。こういった会議に参加するのもはじめてで、空気を読まない発言もしていたかもしれません(笑)。

渡辺:「この会議のゴールはどういうことですか?」「どうすれば前に進むのですか?」といった率直な発言をしてくださったのを覚えています(笑)。国友さんのキャラクターがわかったので、会議が停滞したときやちょっとかき回してみたいときなど国友さんに意見を求めていましたね。せっかくのメンバーが集まっているのだから、少しでも行動して前進させようという意気込みを感じましたし、国友さんの発言に期待している東京都側の幹部メンバーがいたことも事実です。
その後、都道府県の境なく、食品サプライチェーン全体でどんな取り組みができるか、消費者目線も交えて議論するためにSFAが立ち上げられました。私は理事として、国友さんはアドバイザーとして発足時から参加していて、長いお付き合いとなっています。私自身、企業の営利的側面よりも、社会的活動にかかわる研究を重視していたこともあって、オズマピーアールさんのブランド価値と社会的価値の両立をめざす社会デザイン発想とは、もともと相性がよかったのかもしれません(笑)。

環境や経済だけでなく、福祉の視点も。子どもの体験機会につながる「職業体験型食育プログラム」

-SFAでは具体的にどのような活動をされているのでしょう?

国友:たとえば「こどもスマイリング・プロジェクト*」では職業体験型の食育プログラムを実施しています。食品ロスという課題に対し、単に企業が食品を寄付するのではなく、職業体験を通じて子どもたちに食育やエシカル消費について学んでもらおう、そして教材として食を提供しようというスキームです。
企業としては廃棄コストが子どもの教育支援に置き換えられますし、福祉の視点では食の貧困にアプローチするだけでなく、子どもたちの体験機会創出にもつながる。
いま子ども食堂に通っている子どもたちには、食に困っているというだけではなく、大人や社会との関わり不足や経験不足という課題も生まれているんです。そういった面での貢献にもつながるスキームだと考えています。

*企業の職業体験を独自の食育プログラムにしたこどもスマイリング・プロジェクト「職業体験型食育プログラム」。

「こどもスマイリング・プロジェクト職業体験型食育プログラム」賛同企業による
「こどもフードエシカルマスター講座」内 有機農場野菜収穫体験の様子

渡辺:社会性を身につけるための「経験」にもつながるというのは、すばらしいアイデアですよね。私はそれまで、食品ロスの問題を経済や環境問題の側面から捉えていて、福祉の領域にあまり関与してこなかったんです。しかし、実際に関わってみると、そこにはまったく異なる視点がある。たとえば、「賞味期限が迫った食品があるから、廃棄するより必要としている人に提供した方がいいだろう」という考え方は、支援を受ける側の人々を傷つけてしまう可能性があるわけです。そこに食育や体験といった要素が加わることで、企業にとっても子どもたちにとっても幸せな取り組みになっていると思います。

国友:職業体験には企業からもボランティアスタッフが参加してくださるのですが、みなさんこの取り組みに賛同してくださって、自分が働く会社を誇りに思うと言ってくださる。企業姿勢そのものが変化していくきっかけにもなりますし、企業側だけの文脈でなく、子どもたちを支援されている子ども食堂をはじめとした現場で活躍されている方々のさまざまなご意見を伺えたからこそ生まれた発想だったと思います。与えるんではなくて、子どもたちに選択させてあげたい、そんなことを教えてくださった子どもたちの居場所の支援者の方々のおかげで形作ることができました。

子どもの栄養を満たし、食体験も豊かに。生鮮食品を届けるフードブリッジプロジェクト

-自治体や企業、子ども食堂などさまざまな現場に飛び込んで食品ロスに取り組まれていますが、直近の活動やこれから取り組まれたいことなどありますか?

渡辺:いまでは食品ロスに対する企業意識も高くなり、レトルト食品や瓶詰、缶詰など、常温管理が可能で、ある程度賞味期限の長いものについては企業自身で対応できるようになってきています。国は当初、2030年度までに事業系食品ロスを半減(2000年度比)させることを目標としていましたが、2022年度に前倒しで目標を達成。さらに2030年度までに事業系食品ロスを60%まで削減させるという新たな目標が掲げられました。SDGs関連施策のなかでも数少ない、目標を前倒しで達成した分野のひとつです。
しかし、いまでも課題として残っているのが、消費期限が短く温度管理が必要な生鮮食品や日配品の食品ロス。60%の目標達成にはこの問題を解決することが必要ですし、SFAが取り組むべき課題だと考えています。

国友:魚や野菜といった生鮮品、乳製品などの日配品は、子どもたちの栄養管理においてもとても重要なんですよね。しかし、食品衛生上安全な状態で運んで提供することが必要。そのハードルをクリアし、安全に寄贈するためのスキームを「フードブリッジ」プロジェクトと名付けて構築しているところです。
まず取り組んだのは低・未利用魚の寄贈実証。市場のニーズや魚体の大きさなどの問題から低・未利用となってしまった魚を、子ども食堂に届ける実証を行いました。温度管理についてもSFAおよび東京農業大学の専門家からアドバイスを受け、「このかたちなら実現できそう」という礎ができた状態です。
低・未利用魚を届けた子ども食堂では、ちょうど居合わせた子どもたちにも魚を捌く体験をしてもらいました。初めて魚をさわりさばくわけです。それは絶叫しながら体験していました。新鮮な魚を自分で捌いてすぐにその場で子ども食堂のおばさんたちが調理してくださりパクっと一口。すると、やっぱりおいしいんですよね。それまで偏食だった子どもが、魚を好きになったというお話も聞けました。単に低・未利用魚をなくそうというだけでなく、こんなにうれしいリターンがある。環境や経済の視点だけでは得られなかった成果が生まれたと思います。

専門家の力を借りながら、とにかく飛び込み、巻き込む。その先の「いい未来」を信じられるから

渡辺:国友さんはすべての現場に出向いて自ら活動されているのがすごい。私が最近聞いてびっくりしたのが、カジキマグロ漁の漁船のうえで釣り人の皆さんと漁師飯を食べたという話。よく荒波のなかで皆さんと一緒に食事をしたな(笑)というのはもちろんですが、どんどん現場に入っていって、その場にいる人たちと関係性を構築して、次のステップにつなげていることが素晴らしいですね。これは一つの例で、常にこうした人と人のつながりを広げて、課題解決に活かそうとしている姿勢は学ばなければと思います。

国友:与那国での実証のときですね。魚を獲るところを動画にして子どもたちに見せたかったんです。それも食育ですよね。動画を見た子どもたちは漁師さんに感謝をするし、その感謝のメッセージを今度は漁師さんたちにお見せする。そうしたら漁師さんたちもうれしいじゃないですか。
そこまでやるの?と言われることもありますが、やっぱり共感を生むというのは心を動かすことですし、多くの人を巻き込むために必要なことはなんでもやりたい。だから漁船にも乗ります(笑)。はじめはすごくエネルギーを使いますが、そうして築いた関係性は強いし、ずっとつづいていくもの。みんなが心からいいなと思った活動は、たとえ我々の手を離れたとしても地域で自走されていくと信じているんです。

-最後に、今後の活動についての抱負やメッセージなどあればお聞かせください。

渡辺:生鮮品の寄贈スキームなど、一社だけでは解決できない課題がまだまだたくさんあります。その課題についてともに考え、解決策を探ることがSFAの責務だと思いますし、やればやるだけよろこんでいただけるという大変やりがいのある分野。これからもぜひ、賛同いただける企業さまとともに取り組んでいきたいと思います。

国友:私の仕事は、企業に代わってファーストペンギンの役割を担うこと。もちろん、ただがむしゃらに飛び込めばいいというわけではありません。食品ロスに関するさまざまな専門家を有するSFAの皆さんがいてくださるから安心してできることがありますし、私はPRパーソンとして、環境、経済、福祉、さまざまな視点を持つ方を巻き込みながら合意形成することでお役に立ちたい。
そのために奔走する毎日ではありますが、大変であるということは、それだけ必要とされているということ。ひとつひとつの活動に対して「これが実現すればいい未来がある」と信じているから飛び込めますし、これからもファーストペンギンしつづけたいと思います。

国友の経歴や、「社会デザイン発想®」と活動の背景に迫った記事はこちら 
PRパーソンだからできる社会課題へのアプローチとは?オズマピーアールが取り組む食品ロス問題

 

一般社団法人サスティナブルフードチェーン協議会理事
専修大学
渡辺達朗教授


地域と食のサステナビリティの観点から、食品ロス削減と食品寄贈に関する研究と実務の支援に取り組む。農林水産省、消費者庁、経済産業省、東京都などの会議体で座長・委員等を務め、国や自治体の政策立案にかかわる。専攻は流通論・流通政策論。

株式会社オズマピーアール
社会コミュニケーション推進室 室長
国友 千鶴



大手デベロッパー・消費財・飲食メーカーやキャラクター ビジネス・金融・保険など多岐にわたる業種のPR業務に従事。多業種でのB to B、B to Cコミュニケーションの広報を中心としたコミュニケーション課題解決に向けたコンサル・実務サポートの経験を活かし、食品ロス削減×子どもたちの食の福祉を解決するプロジェクト「こどもスマイリング・プロジェクト」を推進。

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